城島印刷株式会社


お知らせ

2014.10.25
野 球 大 会

バシッ! ! 私のミットに勢いよくボールが吸い込まれる。その衝撃音と左手のしびれが野球に夢中だった少年時代を思い出させる。10月、恒例の組合野球大会が始まった。2年前から嘱託社員の身分だが、「のりさん、キャッチャーやる奴がいないんだよな」と常務の伊藤から言われ、「それじゃあ久しぶりにやってみますか」と二つ返事で引き受けた。
伊藤とは同じ営業畑で成績を競い合った仲であり、何でも相談し合える友でもあった。家族共々旅行に行ったこともある。しかし40年の歳月は残酷な現実を突きつけた。定年後は一年更改の契約社員と、飛び級よろしく一気に役員へ昇格した彼と。成績、人望、全てにおいて彼の方が数段優っていた。そのことは私が一番知っている、しかし・・・・。二人の仲は一気に冷え込んでしまった。こんな状態のまま会社を辞めることになると思うとやり切れなく、悶々とした日々が続いていた。そんな頃妻が言った。「貴方より伊藤さんの方が苦しんでいるかもよ」伊藤のこともよく知っている彼女ならではの発言だった。そうだった、自分のひがみ根性に振り回されて伊藤のことを思いやる余裕のなかった私。社内でたまに目を合わす時の、彼の何とも寂しそうな表情を思い出した。伊藤の方こそ辛かったにちがいない。私は悔いた。そして彼に詫びた。友情は復活し、もうわだかまりは何もない、伊藤は伊藤、私は私、互いに信頼しながら次の人生を歩もう。最終回、最後のバッターになった私にベンチから伊藤が叫んでいる。「ヒットなら逆転さよならだぞ! 」私は今までのモヤモヤを一気に振り払うように力一杯バットを振った。しかし相手のキャッチャーミットの中にバシッ! !、ゲームセット。
  契約社員(内勤営業) 高橋のりお
秋高し 吾白雲に乗らんと思ふ 夏目漱石