印刷物を発注する際、「もっと少ない部数だと単価は安くなるのかな?」と期待して見積もりを取ったら、意外と単価が下がっていなくてがっかりした経験はありませんか?実はこれには、印刷業界ならではの理由があるんです。今回は、部数が減っても単価が大きく変わらない謎について、印刷の仕組みを交えながら解説します。
ここで言う「単価」とは、単純に全体の費用を部数で割った金額であり、その商品1部あたりの最終的な販売価格とは異なります。
印刷の「固定費」が大きいから
印刷物の制作には、部数が増えれば増えるほどコストが増える「変動費」と、部数に関わらず発生する「固定費」があります。部数が減っても単価があまり変わらないのは、この固定費が占める割合が大きいためです。
具体的な固定費の例としては、以下のようなものがあります。
- 版代(PS版・CTP版): 印刷機にかけるための版を作る費用です。オフセット印刷の場合、部数が100部でも10,000部でも、同じ版が必要です。
- 製版代: 印刷データから版を作成する前段階の工程にかかる費用です。
- データ処理費: 入稿されたデータを印刷用に調整する費用です。
- 印刷機のセッティング費用: 印刷を始める前に、版を印刷機にセットしたり、色や見当(位置合わせ)を調整するのにかかる費用です。
- 作業員の賃金: 印刷機の操作や検品など、作業にかかる人件費は、ある程度の時間は部数に関わらず発生します。
これらの費用は、たとえ1部だけ印刷する場合でも発生します。そのため、部数が少なくなればなるほど、1部あたりの固定費の負担が大きくなり、結果的に単価が高く見えてしまうのです。
部数が増えると「スケールメリット」が働く
逆に、部数が増えると単価が下がるのは、スケールメリットが働くためです。前述の固定費は、たくさん刷れば刷るほど1部あたりの負担が小さくなります。例えば、版代が10,000円だとすると、100部刷れば1部あたり100円の負担ですが、10,000部刷れば1部あたり1円の負担になります。
さらに、大量の用紙を仕入れることで材料費の単価が下がったり、印刷機を長時間稼働させることで効率が上がったりする効果も期待できます。
少数部数の印刷で単価を抑えるには?
では、どうしても少数部数で印刷したい場合は、単価を抑える方法はないのでしょうか?いくつかの方法があります。
- オンデマンド印刷の活用: オフセット印刷のように版を作る必要がないため、固定費を大幅に抑えられます。名刺やポストカードなど、少ロットの印刷物に適しています。
- 用紙や加工の見直し: 特殊な用紙や複雑な加工はコストアップにつながります。シンプルな仕様にすることで、単価を抑えられる可能性があります。
まとめ
印刷の見積もり部数が減っても単価があまり変わらないのは、版代やセッティング費用といった大きな固定費が存在するためです。少部数ではこれらの固定費が1部あたりに大きくのしかかってきます。もし、少部数での印刷を検討しているのであれば、オンデマンド印刷の利用や、仕様の見直しを検討してみるのがおすすめです。
城島印刷は高品質なオンデマンド印刷を承ります。お見積りいたしますのでお気軽にお問合せください。
