デザインデータを作成する際、「塗り足し」や「トンボ」という専門用語を耳にすることがあるかもしれません。これらは、美しい印刷物を完成させるために、実はとても大切な役割を担っています。今回は、これらの要素がなぜ必要なのか、そしてどのようなものなのかを、具体的なイメージとともにご紹介します。
「塗り足し」は断裁の“保険”
皆さんは、印刷物が完成するまでに、何枚もの紙が重ねられて断裁機で一気にカットされることをご存知でしょうか?この断裁作業、最新の機械を使っても、どうしてもわずかなミリ単位のズレが生じることがあります。
もしデザインが仕上がりサイズのぴったり端までしか描かれていないと、この断裁時のわずかなズレによって、意図せず紙の地色(ほとんどの場合は白)がフチとして現れてしまう可能性があります。せっかくデザインしたのに、端に白い線が入ってしまったら、ちょっと残念ですよね。
そこで登場するのが塗り足しです。塗り足しとは、印刷物の仕上がりサイズよりも、デザインを上下左右に数ミリ(一般的には3mmが推奨されています)広げて作成することを指します。この「少し余分に広げる」というひと手間が、断裁時のズレを吸収し、最終的にデザインの端までしっかりと色が乗った、プロフェッショナルな仕上がりを実現するための“保険”となるのです。
「トンボ」は印刷加工の“道しるべ”
一方、トンボは、印刷物を作る上でのさまざまな工程で活躍する目印のことです。正式名称は「レジストレーションマーク」ですが、その形が昆虫のトンボに似ていることから、日本ではこの通称で親しまれています。
トンボは主に以下の情報を含んでいます。
- 仕上がり位置: 印刷物が最終的にどのサイズにカットされるのかを示す線です。これが「ここが最終ラインですよ」という印になります。
- センタートンボ: 印刷物の中心を示す十字の線です。これにより、デザインが左右対称に配置されているか、また用紙の中心に正しく印刷されているかを確認できます。
- 折り位置: チラシやパンフレットなどで折り加工がある場合、正確な折り位置を示す線です。
これらのトンボは、印刷オペレーターが断裁機を操作する際や、色を重ねて印刷する際に、正確な位置合わせを行うための重要な“道しるべ”となります。トンボがなければ、デザインが曲がって断裁されたり、複数の色がズレて印刷されたりする可能性が高まってしまいます。
なぜこの二つが欠かせないのか?
「塗り足し」も「トンボ」も、一見すると印刷物には写らない余白や記号のように見えるかもしれません。しかし、これらは「データ通りに、高品質な印刷物を完成させるため」には、どちらも欠かせない要素なのです。これらを適切に設定することで、断裁後の「白いフチ」を防ぎ、色のズレなく、正確なサイズの印刷物をお届けすることが可能になります。
城島印刷では、お客様のデザインデータに塗り足しやトンボが正しく設定されているか、プロの目でしっかりとチェックいたします。もしご不明な点があれば、具体的なアドバイスもさせていただきますのでご安心ください。お客様のイメージを形にするお手伝いは、ぜひ城島印刷にお任せください。
